池田清彦

 社会にとって有益ではない人間は不要である――そうした考え方は、障害者や高齢者のみならず、失業者や生産性の低い労働者にも向けられつつあります。「人工知能(AI)が人類の知性を超える『シンギュラリティ(技術的特異点)』が、近い将来訪れる」という議論も流行りましたが、すでに機械が人間の労働を代替しつつあるなかで、失業者や単純労働者への風当たりがますます強くなっているのは間違いありません。  現代優生学は優秀な遺伝子を増やし、劣悪な遺伝子を淘汰するという、旧来の優生学から離れて、「生産性のない人間を直接淘汰する」という、より過激なほうへと向かっているように感じられます。